2013年5月28日火曜日

攻殻S.A.C.ファンがARISEを観た感想――少佐じゃないけどしっかり素子だった

 

攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain」のプレミア先行上映イベントに行ってきました。自分は別に押井攻殻でも原作でもなく、ただS.A.C.が好きだというファンなだけに、失礼ながらも心配しながら観に行きましたが、満足して帰りました。

以下ちょっとイベント内容のレポートをしてみたいと思います。話のあらすじには触れていないので、よほど「絶対に予備知識を入れたくない」という方以外は、鑑賞前に読まれて楽しみが損なわれることはないかと思います。

イベントでは黄瀬監督、脚本・シリーズ構成の冲方丁さん、I.Gの石川社長が軽く鼎談をされました。石川社長いわく、今回はいかに過去の攻殻を壊せるか、border:4まで続く新しい「第四の攻殻」を好きになってもらうかの“ツカミ”だったとのこと。冲方さんからは、「監督からは『サスペンス』がやりたい、とのことだった。何も分からない、情報がないことでサスペンスになると思うので、いかに素子を情報から遮断するかを考えた」という話。素子らのデザインについては、ARISEが公安9課ができる前の話なので、若さがあっていいだろうということで、少女っぽさを出すために、前髪を思い切ってパッツンにしたとのことでした(黄瀬監督)。

脚本を冲方さんにしたことについて石川社長は、S.A.C.が長く強烈な印象があると思っていて、アニメの脚本というより、オリジナルの小説が書ける人じゃないと、ということでお願いしたとのこと(←これは他でも語っておられますね)。

その冲方さんは、(S.A.C.のように)チームかと思ったら一人だったのは意外だったが、皆それぞれに素子像、攻殻像というものがあるだろうから、誰かが一カ所でまとめないと収拾できないだろうから(一人が任されたのだろう)とのことでした。また黄瀬監督から「素子をかわいくしたい」「女の子にかわいいと思ってもらえる素子にしたい」という高いwハードルがあったことも披露されました。

黄瀬監督は「基本、各話の監督に任せている」と言われていましたが、石川社長は、押井ならやめさせるようなカットがあがってきても黄瀬は(OKだから)面倒みるから、とおっしゃっていて、黄瀬監督は、現場の意見も良いものであれば積極的に取り入れたようです。鼎談の最後でも、border:1の作画監督だった西尾鉄也氏について、「西尾作監の感性がいきていて、みずみずしいものになっている(自分なら、やらしい感じになったと思うw)」とおっしゃっていました。

「ARISE」をつけたのは冲方さんで、最初は「BEGINS」という案もあったが、それは「どこかで聞いたなぁ(笑)」ということで却下だったそうです。今回、新しい攻殻をつくるということでキャッチを考えて、ARISEなら意味もぴったりだろうということで決まったと。

border:1のテーマはサスペンスでしたが、border:2のテーマはアクションとのこと。今後いかに素子が仲間を獲得していくか(登壇者いわく『あのメスゴリラにキンタマ握られるか』)が今後のシリーズの見所になります。

あと、石川社長がいきなり、まさに制作中だというborder:3の話をしはじめたときは、司会の方や監督、冲方さんは驚いておられました。


以上、会場での走り書きメモをもとに、思い出しながら構成しましたが、記憶違いがあったらご指摘いただけると助かります。

* * *

さて肝心の作品についてですが、僕は個人的には満足して帰りました。
上にも書きましたが僕はS.A.C.のファンです。でも今回、キャラのビジュアルは結構違い。VC(声優)も皆変わっていて、大好きな田中少佐、大塚バトー、山寺トグサ、そして何と言っても玉川タチコマがいない。S.A.C.はポリスアクションとしても好きだし、1話完結しながらも、シリーズを通して大きな事件が関わっていて、扱われる事件が社会性や時代性を反映(または先取り)している一方、より普遍的に考えるべき問題も提示していて、かなりお気に入りの作品です。
 
だから観る前は心配でした。
 
冲方さんもおっしゃっているように、それぞれの素子像、攻殻像というものがあるわけで、僕の中にもあります。その自分の中のイメージとARISEで提示されるものがかけ離れていたらどうしよう、「俺はこれ、好きじゃない」という感想を持ってしまったら嫌だなぁ、と思いながら行きました。

しかし、結果としては、原作とも、押井GITSとも、神山S.A.C.とも違う、でもしっかりと「攻殻」である、「第四の攻殻」だったと思います。

一度しか観ていないので、完全に理解していない部分もあるでしょうし、不満もなくはありません(オープニングとかやっぱりS.A.C.のほうがいいよなぁとか思いましたが、3つの攻殻があってこそのARISEということは忘れてはいけないですね)。

でも、これだけファンが世界中にいる「攻殻機動隊」をいま改めて映像化するにあたって、想像を絶するプレッシャーがあると思われる中、制作陣はしっかりと答えを出されたのではないかと、今の段階では思います。

あくまでborder:4まででARISEですので、そこまで観てからの評価を待つべきでしょうが、少なくとも今の時点では早くborder:2が観たいですし、できれば6月22日以降、劇場なのかディスクでなのかは分かりませんが、早めにborder:1をもう一度観たいと思いました。