2013年8月23日金曜日

『アニメ ビジエンス』創刊号感想 カラー減らしてテキスト増やして……

一つひとつの記事は面白い



アニメ ビジエンス』の創刊号。無料(第2号以降は定期購読)ということで取り寄せて読んだ。判型はA4正寸と大きめ、無線綴じ60ページフルカラーだ。2号からは一号あたり1500円になるという。面白い記事もあったし、試みとしては応援したいが、これを1500円出して自腹で買うかと問われると……答えに窮する。読みたいとは思うが、うーん、買わないと思う。

 雑誌名である『アニメ ビジエンス』。聞き慣れないはずで、編集発行人の創刊言によれば、
アニメの「利用価値」を俯瞰で捉え、アニメ産業の可能性を探りたいというニーズがあるのではないかと考え、アニメビジネスを科学する(ビジネス+サイエンス)という意味で「アニメ ビジエンス」と名付けました。
とのこと。こうした位置づけの定期刊行物って他にはないと思う。

 表紙は庵野秀明監督によるヤマト。これだけでもちょっと手元においておきたくなる。
 特集は「クールジャパンはビジネスになるのか?」だ。「クールジャパンというとアニメに限らなくなるけど……」という指摘もあろうが、そこは特集トビラのリードでしっかり説明されている。いわく「『アニメ ビジエンス』はアニメ業界ビジネス誌なので『クールジャパン』そのものを語るべきではないが、今一度、『クールジャパンという構想がアニメ業界に対して何をもたらすか考えてみたいと思った」とのことだ。
 インタビュイーとしてアニプレックスの夏目公一朗社長、バンダイナムコゲームスの鵜之澤伸副社長、明大の森川嘉一郎准教授ら豪華なラインアップ。石川千代田区長へも取材しており、実にシブい。ほかにもTOKYO OTAKU MODEの亀井・秋山両ファウンダーにも取材、全体的に面白かった。

 業界誌らしくデータベースとしての機能もしっかり果たしている。2012年度の劇場用アニメーション総括を氷川竜介さんが執筆しているほか、4月から6月期のアニメビジネスのデータを藤津亮太さんがまとめている。
 
 このほかにクリエイターインタビューシリーズに原恵一監督が登場。スタジオ訪問の第1回はユーフォーテーブル福井健策弁護士による著作権と法務とアニメ(内容は児ポ)、マッドハウスを設立した丸山正雄さんの一代記など、連載ラインアップもそれぞれネタもすごいし、記事も良かった。

 楽しく読めたのだが、それでもやはり1500円はちょっと高いと思った。

なぜこのパッケージなのだろうか

本誌は定期購読のみの業界誌で、書店で広く販売する一般の書籍とは違う。内容も専門的で、「アニメ」というキーワードというより、「アニメ ビジネス」にピンとくる人しか買わないだろう。買う人が限られる以上、ある程度高い金額にするという形は珍しくない。そして、内容も狙った方向性にあるとは思う。

 しかし、最近では一般のビジネス誌などでもアニメなどを取り上げる時代だ。「アニメ ビジネス」という切り口は、定期刊行雑誌のメインテーマとしては珍しいかもしれないが、ビジネス誌や一般誌やブログ、ネットニュースなどに読み物や分析がたくさんあって、どうしても本誌でないと読めないという状況にはない。

 だから専門性をもっともっと高めてマニアックにして、「ここでしか読めない」「この雑誌の分析が読みたい」ということにならないと、ちょっとこの値段は出せないのではないだろうかと思う。そういう目線で読むと、まだマニアック度が足りない(多くの人にとって読みやすい)気がする。

 自分がアニメ絵を表紙にした雑誌を安く作っていたから言うのではない(休刊してしまった以上、アドバイスできるはずもない)のだが、読者として思うのは、もっと別のやり方があるのではないだろうかということだ。

 いま注目されているパッケージの一つに「メルマガ」がある。たとえば、この雑誌をメルマガという形で出すということはあり得なかったのだろうか? メルマガは筆者の個人メディアという色合いが強いけれど、コストはかなり抑えられる。紙で出すとその分、印刷代や送料がかかるのは言うまでもないからだ。

 メルマガはあり得ないとしても、A4正寸という大きめのサイズで、60ページ全部をフルカラーにする必要が、この内容の雑誌であるのだろうか。

 正直なところ、テキストは面白いとしても、全体的にビジュアルにそれほど凝っているとは思えない。もちろん、「庵野ヤマトの絵を取っておきたい」といったオタクマインドにうったえる雑誌ならば、フルカラーはアリだろう。人気キャラのグラビアは1Cや2Cではファンは物足りないからだ。でもそれだとライバルは『アニメージュ』『アニメディア』になってしまって、コンセプトからはかけ離れてしまう。
 中で使用されている写真にしても、作品のキャプチャは版権主から提供されているからきれいなビジュアルだが、カメラマンが撮ったのではない写真も散見されるし、データベースページの表組レイアウト(特にここは強調したい。読みづらい)、記事そのもののレイアウトなどを合わせてみても、いわゆる「業界誌」然としており、カラーで見せる必要があるとは思えない。

 もしそこで判型やカラーの割合などを変えることでコストが抑えられるのであれば、それは悪くない話ではないだろうか。

 繰り返すけれども内容は面白い。けれど、福井弁護士にはもっともっとマニアックな法律の話が聞きたいし、原監督のインタビューは2ページじゃ少なすぎる。データベースページは参考になるけど表組が読みにくすぎる。スワッチの業界見聞録なんてシブい企画だと思うし、特集も取材先の話をもっと聞きたい。

 サイズをA5くらいにして、1C・2Cのページを増やせば、もっとで出したりすれば、広告の自由度が下がるけれど記事がもっと読めるんじゃないかなぁ、と思ったのだが、いかがだろうか?
 雑誌の継続のための支援とか、領収書とって経費でおとすから、ではなく、一読者として読み続けようという方はどれくらいいらっしゃるか、気になる。

2013年8月16日金曜日

不動産サイトのデータ入力で大変なこと


不動産情報の交換ができるデータベースシステム「REINS」(レインズ)というものがある。Real Estate Information Network Sysems for IP Servicesの略だそうだ。不動産流通機構の会員のみが使えるサービスで、会員が登録した物件が閲覧できる。同様のサービスは他社も提供しているのだが、REINSが一番有名なのか、不動産業者はたいてい加盟している。当社も、東京4万暮らしドットコムの運営会社に協力をしている関係で、このレインズの中を見たり、データを触ったりする作業をしている。

先日のエントリに書いたように、東京4万暮らし不動産プラグインを使わせてもらっている。不動産の物件情報は、所在地や築年だけではなく、設備、駅からの距離などたくさんのデータがある。これをいちいち打ち込むのは大変なので、CSV形式で書き出したものをインポートして修正する。

この不動産プラグインではCSVが読み込める形式として、「東日本レインズ」「旧近畿レインズ」「ホームズ」「センチュリ21」から選べる。レインズやホームズから、物件情報(所在地や建物名、賃料、設備などのデータ)をCSVでエクスポートし、不動産プラグインで一気に読み込んで掲載できる。

ただしCSVはテキストデータだから画像は別途用意しないといけない。

また物件情報を見ていて気づいたのが、広告不可物件が意外に多くて、これがCSVに情報として書き出されないのが結構辛い。広告不可物件とは、レインズに情報は上がっているけれどもウェブやチラシなどで広告できない物件のことだ。なぜ広告したくないのか、いろいろな理由があるのだろうが(だからサイトには出てないけど不動産屋に行くと見られる物件があったりする)、ともかくCSVにはこのデータが書き出されないので、数百と読み込んだ物件データを一つずつレインズの検索結果と照らし合わせないといけない。CSVに広告不可かどうかのデータが入れば、インポートする前でもした後でもソートして除外ができるのに。数十、数百の物件があって、広告不可が数十件あったりすると、やはり萎える。

作業をやって困ることは画像や広告不可物件のことだけではない。たとえばCSVでは共益費と管理費の項目が別々にあるのだが、インポートされるのは共益費の項目だけ。なのに項目は共益費・管理費となってしまう。2つの項目を合算してインポートしてくれるわけではない。

「CSVをいじって2つの項目を合算すればいいじゃないか」ということで、MS EXCELで開こうものなら、今度は物件番号が桁数が大きいために変換されてしまってうまくいかない。仕方が無いのでOpenOfficeをインストールしてCALCで合算するという、何だか不思議なことをやる羽目になっている。

いろいろと愚痴ってしまっているが、すべて無料でやらせてもらっていると考えれば(レインズは加盟社が料金を払うシステムだが)、あまりあれこれ要求できるものでもない。特に広告不可物件かどうかはレインズが吐き出すCSVの形式のことだから、不動産プラグインの提供元にいうことではないのだが、ここまで便利なプラグイン、せっかくなのでもっともっと便利になるといいなぁ……と思ってしまう。