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2022年1月30日日曜日

『金融サービスの未来』感想――「顧客が損しても儲かる」から「顧客を儲けさせてはじめて儲かる」へ


金融サービスの未来: 社会的責任を問う (岩波新書 新赤版 1904)』(新保恵志著)は著者が元銀行員(日本開発銀行→住友信託銀行、いずれも入行当時)だけあって、銀行に対する新しい在り方の提言は具体的かつ実践的に感じた。

ここが変だよ日本の銀行

特に手数料や金利について消費者、ユーザーの視点からおかしいと思われることを指摘し、「こうあるべきだ」という分かりやすい提言をしている。

特になるほどと思ったのは次のような箇所だ。

かつて銀行がよく売った元本保証型の一時払い変額年金保険は、売った時点で手数料がひかれたマイナスからのスタートとなるにもかかわらず、そうした説明が不十分であること。

投信の手数料については、銀行は販売手数料を顧客でなく投信会社など販売を委託した主体からとるべきであること、信託報酬や運用手数料は基準価額が最高を更新したときにだけ払ってもらうようにすべきこと。

たとえば銀行の普通預金金利はどこも横並び――メガとネットバンクでは異なるが、競合同士(メガ同士、地銀同士など)ではだいたい同じ――だが、信用リスクが高い銀行に預けたら高い金利をつけるべきこと。

銀行がお金を貸すときに保証を求めるなら、保証協会の費用はお金の借主に負担させるべきではないこと。

いずれも納得だった。

手数料のあり方 すなわちビジネスのあり方そのものを見直すべき時期では

特に手数料については、銀行のみならず金融業界がそのあり方を見直すべき時期なのではないかと思う。

金融商品を販売することで(売買するたびに)手数料を受け取っているから、証券会社が顧客に不要な売買を繰り返させたりする。売ってしまえば後のことはどうでもいい「売ったもん勝ち」の営業がはびこってしまう。顧客が損しても売る側は得をとっているから信用されない。

投信の運用もそうで、基準価額がクソ下がってるのに手数料とるから「おかしい」と思われるわけで、上で紹介したように「成果が出たら払ってもらえる」ということにすればいい。

だからといって、「販売手数料をなくしたらロビンフッドのような形になって、ゲームストップ株のような問題が再発する」ということでもないはず。

顧客が損したら売った側も損しろとは言わないが、得はしないようにすべきなのかもしれない。少なくとも金融機関のトップのクソ高い報酬はいつまでも許容され続けることはないような気がする。

2016年6月27日月曜日

FinTech onlineをつくった。編集者募集中


今年の春にフィンテックに関する国内外の記事を掲載するメディア「FinTech online(フィンテック オンライン)」を立ち上げた。

自分は昨年からZUUに参加して、主にZUU onlineの編集に携わってきたが、もともとZUUが「金融×ITで世界をかえる」とうたっていることから、ZUU onlineでもフィンテックに関する報道には力を入れていた。

遅きに失した感はあるものの、この際そこを切り出そうということで今年の年初に「FinTech online(フィンテック オンライン)」を単体のメディアとしてスタートさせ、今春に本格オープンさせた。

2013年12月27日金曜日

「文書が読める」は「意味が分かる」「仕事に使える」ではない——『A4一枚決算書速読術』を読んで




Webサイトの仕事が増えているので、アクセス解析をより深く理解せねばと思っている。具体的にはGoogle Analyticsを今以上に詳しく使えるようになりたいのだけれど、Googleという米企業のサイトだからかなのか何なのか、言葉遣いや構造が独特だなぁと感じてなかなか進まない。なんと言うか、日本人が作ったサービスじゃないなぁ、というか……。英語のサービスを日本語にしているからなのだろうか。


2013年6月13日木曜日

議決権行使をネットでやったら誘導されそうになった


 今年初めてネットで議決権行使をして気づいたのだけれど、議決権行使のウェブサイトには、「会社提案議案全議案に賛・株主提案議案全議案に否」というボタンがある。「今さら?」と言われるかもしれないけれど、これって結構ひどくないか? 誘導がすぎるのではないだろうか? 株主提案なんて、取締役会は得てして反対するもので、僕が株主になっているこの企業もそうなのだけれど、賛否を記して返送するハガキにはこんな項目はない。一つずつ、賛と否のいずれかを丸をつけていかなければいけない。これまでずっとハガキに一つずつ○を付けて送り返していたので、ネットでこんなことになっているとは知らなかった。

 たしかにハガキにも、「(ご注意) 株主提案につきましては、当社取締役会はそのいずれにも反対しております。」という注意書きはある。だけど「一カ所に丸をつければ、株主提案議案だけ反対できる」なんて機能はない。

(ついでにハガキの説明の分かりにくさでいうと、「株主提案に賛成の場合は『賛』に、当社取締役会意見に賛成の場合は『否』に○印でご表示ください」という説明も分かりづらい。そこは「株主提案に賛成の場合は『賛』に、反対の場合は『否』に○印でご表示ください」でいいだろう)。

 見方がズレてるようなら失礼。

2013年5月17日金曜日

「男が働き、女が育てる」が常識という時代じゃない――女性の役員・管理職登用積極化

3メガ銀初の女性役員…三菱UFJが川本氏起用

 先日この記事を夕刊で読んで驚きました。これまで3メガバンクには女性役員が一人もいなかったんですね。「なんて業界だ」なんて思っていたら、イオンが2020年までに女性管理職の比率を50%まで引き上げる方針を明らかにしたそうです。イオンのほうは役員ではなく管理職ということですが、現状は7%とのこと。イオンのような小売り、GMSは女性客が多いでしょうから、7%は低い気がします。業種にもよると思うのですが、日本の企業は全体的に女性の取締役、管理職への登用が遅れているんだろうなという印象があります。具体的にはどれくらいいるんだろうとググってみたところ、東洋経済にこんな記事がありました。こんなもんなんですね。表を見て改めて少なさに驚きました。

女性役員が多い会社はどこか?
パソナ、ニチイ学館、エステーが最多の4人 

 女性役員・管理職の積極的登用について考えると、「女性だから役員になれなかったんじゃなくて優秀な女性がいなかったからでは」という意見が出てきそうですが、そんなことはないと思います。やはり結婚、出産、育児の過程で、オフィスから遠ざかる(遠ざけられる)のが女性ばかりだったから、つまり押し付けて放逐されてきたからというのが一つの理由ではないでしょうか。その過程で女性は残りづらくなっていく、そういう雰囲気をつくってくたのではないでしょうか。三菱UFJのボードに入った川本氏も叩き上げ社員ではなく、外部からの就任です。女性にとって「入社→出世→役員へ」というコースは難しい気がします。

 無理に女性を役員にすることに意味があるのかという意見もあるでしょう。逆に差別なのではないかという人もいるかもしれません。しかし、女性が役員として経営に携わりやすい環境をつくること、そのために数値目標の設定はあっていいと思います。それがないと絶対にやらないはずで、だから今のようになっているわけです。やってみて問題があれば替えればいいでしょう。アファマティブアクションといっていいかはともかく、当面はそうした措置が必要だと思います。
 自民党の「女性力の発揮」っていうキャッチはどうにかならなかったもんかとは思いますが、これまで能力を発揮したいと考えていた女性たちが、性別が男性でないということを理由に重用されなかったり、軽んじられたりということがあったはずですから、それを無くしていくことは必要だと思います。

 この問題は、誤解を恐れずにいうと、障害者の法定雇用率制度の議論と似ている気がします。むろん、女性が障害者であるといっているのではありません。男ばかりの取締役会に入る女性はマイノリティだという意味です。以前、Twitterで、障害者の法定雇用率を無理して守るくらいなら罰金を払ったほうがマシというツイートをしている人がいましたが、それと同じ考えをする人が出ないとも限りませんから、目標の設定は必要でしょうが、ルールを決めればそれでいいというものでもないでしょう。「我が社は女性を登用したくない。罰金払えばいいんだろ」っていうのはおかしな話です。

 そうした変革を実現することで、男性の働くことに対する意識や習慣にも変化が生まれるでしょうし、役員や管理職ではない、一般の女性社員も働きやすくなるはずです。またこれまで「女性の仕事」だった「育児」に男性がより関わるようになることが期待できる点は大きいと思います。

 ただ「我が社は男性だけで経営する」ということが責められるものなのか? ということも考えるべきだと思います。たとえば役員もしくは社員が女性ばかりの会社もあるでしょうし、それを妨げるのはおかしい。だから「義務化すればいい」といった問題ではなく、数値目標の設定とレビューから始めて、業種や規模を問わず、いずれの企業も「他人事(他社事?)」と考えずに議論し、検討することが求められるのでしょう。

 ここでふと、「じゃあ自分はどうなんだ」と自問しました。いま自分が関わっている会社は一人代表ですが、重要な経営方針を決めるメンバーに女性はいません。日常的な方針などは皆に情報開示して皆で話し合っていますが、役員というか出資者、そのメンバーに女性はいません。とはいえ別に避けたつもりはありません。無理に女性を入れろと言われると、それはそれで困るものもありますね。一律に女性を幹部に登用すればいいってわけではないというのもまた正しいのでしょう。

2013年5月15日水曜日

NISA普及が目的? 金融コンシェルジュは機能するのか

お金の悩みや相談 病院内に窓口開設 金融コンシェルジュ

 実現してワークすればとてもいいことだと思いますが、果たして病院にかかる高齢者がどれだけこうした窓口を活用するでしょうか。当面は都内の河北総合病院で週1回、1年間やってみるそうですが、とりあえずやるなら常駐させるぐらいがっつりやらないと意味なくないでしょうか。お金に関する相談を他人にするっていうことに、抵抗がない世代ではないでしょうから。
 一般的な資産運用の知識を伝えたり相談にのったりするそうですが、金融商品を売ることはしないそうです(とはいっても、そのあたりはどうにでもなるでしょうが)。

 ところで金融庁がまとめたのは「高齢化社会に対応した金融サービスの向上について」(PDF)というものですが、その中に
現役世代が将来に向けた資産形成の必要性や積み立ての重要性(金融リテラシー)を認識しなければ、積み立て型の長期投資商品をコツコツ購入する動きは広がらない。
という問題認識が掲げられています。金融リテラシーを上げることには賛成ですが、「積み立て型の長期投資商品をコツコツ購入する動き」をつくることが目的なんでしょうかね? 

 投資とか金融商品に対する考え方は、もっと早く、学生のうちからやっておかないとダメだと思います。もちろん教えるのは、学校の先生では無理なので、させてはいけないと思います。専門家を招聘してやってもらえばいいのでは。ただ当面は親がついて行けないということも考えられるでしょう。

 あとリバースモーゲージとか中古住宅の資金化についての軽く言及がありますが、このあたりもっと使いやすくしたほうが、先々のことを考えるといいのではないかと思います。特に都心ではもったいない物件がたくさんありそうです。

 総じて、NISAの普及のためにやる感がアリアリで、何だかなとも思いますが、お金に関する相談がちゃんと受けられる仕組みができること、金融リテラシーを高める施策をすることには賛成なので、河北総合病院での取り組みに注視したいと思います。